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淫虫症の女 1-1

 七月二十日、月曜日。

 淫虫は、仁美の子宮を支配した。






 仁美が異変に気付いたのは、朝起きてすぐのことだった。

 何か股のあたりが気持ち悪い……そう思ってベッドから身を起こし、彼女が自分の股間を確かめてみれば──彼女の股間、その中心部は、驚くほどビショビショに濡れてしまっていたのだ。

 尿でも下り物でもない。寝ている間に分泌したのか知らないが、大量の愛液がパンツをベタベタに汚している。

 いや、パンツだけではない。腰を浮かせて身体の下を覗き込んでみれば、シーツにもベッタリと恥ずかしいシミができているではないか──。


(え……やだ、何……これ……)


 ピンク色の布を膝まで下ろして中を覗き込むと、股間の中央では──クリトリスだけではなく、秘裂までもが充血しきってプックリと赤く腫れ上がっているのが確認できた。

 もちろん、それにともなって腰にはズッシリと重い感覚もあり……。

 仁美は心臓がドキドキして、息が荒くなっている自分に気が付いた。


「あ……はぁ……はぁ……はぁ……」


 朝七時。寝起きの身体を包んでいるのは、まぎれもなく性的な興奮だった。

 こんなにもムラムラしたことは、今まで一度もなかったと思う。それほどまでに強烈な、性への飢餓感。

 天気のよい初夏の朝。窓からは爽やかな光が差し込んできているというのに……仁美はもう、我慢しようと思うことすらできなくなっていた。

 彼女は一秒たりとも待てないといった感じで──むさぼるように自らの恥部に手を伸ばした。


 ニチャリ、ヌプ、ヌチョリ。


 女盛りの二十五歳。長く白い指は男を刮目させるほどに美しかった。

 その美しい指が、下品に濡れそぼった陰唇をこねくり回す。

 中心の穴から溢れ出しているトロトロの愛液を塗り込めるかのように、上下左右、入口のヒダを丹念に愛撫する。

 指を二本膣道に入れ、可能な限り奥までねじ込む。

 中もグチョグチョに溶け、充血し、収縮し、大変なことになってはいたが──彼女は指が届く一番奥の部分、その柔らかい内壁に、指の腹を強く押し当てた。


「んふぁ……あふぅ……んくうッ……」


 中で指を折り曲げて、激しく肉壁をえぐる。

 蚊に刺されて痒くなった部分をそうするように、指先を激しく動かして内側のヒダをかきむしった。


「……くあッ……はあッ……んぐあッ……」


 膣の中からは、信じられないほど大きな快楽が溢れ出してきた。

 指が当たった壁が、ジンジンと痺れて、熱く甘い感覚が搾り出されてくる。


(……あッ……な、何これ……す、スゴイ……スゴすぎッ……き、気持ちイイッ……?)


 仁美は額に玉のような汗を浮かべて、その甘美に抗おうとする。

 が、無理だった。

 今までのセックスでも感じたことのない凶悪な快感に、魂が吹き飛ばされそうになる。

 腰が浮いて、口からは泡のようなヨダレがだらだらと溢れ出す。


「……んぐぅ……うぅ……ぐああぁッ……」


 仁美は我を忘れ、あられもない姿でよがり泣いてしまった。

 右手で秘部を貫いたまま、左手をシャツの下から差し込んで、自らの乳房を揉みしだく。

 ブラの上からでは物足りず、彼女はホックを外すのももどかしく、無理矢理下着をずらし上げては──露になった乳首、その先端を指でつまんだ。

 身体中が火照り、敏感になっているのはもう嫌というほど理解していた。

 身体のどこを触っても声が漏れてしまいそうなほど気持ちがいい。

 そんな状態の中で、乳首をいじる訳である。

 ピンと勃起した突起の先を強くつねると、それだけで目の前に閃光が炸裂した。


「あふあっ……あくぁ……んくッ……あッ……」


 視界がチカチカと明滅し、まぶたや唇がブルブルと震え出す。


(……あふッ……な、何、これェ……こんな快感……知らないッ……んふあぁ……)


 どれだけ興奮していようと、こんなにも感じるハズがない。

 そう思えるほどの異常なまでの快感が、乳首の先からドクドクと湧き出してきた。

 泥のような快感は、何本もの神経に乗せられて全身に巡り、股間から湧き出す甘い悦楽と一つに混ざり合っては──頭の先から足の指先にまで、一瞬にして染み渡っていくのだった。


「あんあッ! んひッ! んはああッ!」


 仁美は早くもオーガズムに達していた。

 乳首と膣道をいじくり回しながら、目をつぶり歯を食いしばって、ベッドの上で身体を暴れさせる。

 マットのスプリングを軋ませ、無駄な肉のない理想的な女体をエビのようにくねらせて悶える。


「んふうッ! んぐうッ!」


 ビクビクビクッ!


 足の指先がピンと伸び、手の指は豊満な乳房に五本ともめり込んでいた。


「んぐあああッ! ああああああッ!」


 呆れるほど大きな快楽に、意識まで飛ばされそうになってしまう。

 仁美はなおも止まらない気持ちよさに身も心もさらわれて、幸福感の大海原に呑み込まれていった。


(ふぐああッ……すごいッ、すごいぃぃ……、気持ちイイッ……何なの、これぇ……)


 ピクピクと身体を震わせ、いつまでも終わらない長い余韻に浸りながら、仁美はどうしてこんなことになっているのか、その可能性について考えを巡らせてみた。

 が、こんな症状……心当たりなんて一つしかないに決まっていた。

 仁美は思う。

 きっと昨日のプールで感染したんだと。

 あの客たちの中に、淫虫を飼っていた女が紛れ込んでいたのだと……。

 間違いない。

 こんなの──淫虫に感染している以外にはありえないんだから……。





 今、日本では、淫虫症という病気にかかる若い女性が爆発的に増加していた。

 淫虫症──。

 文字通り、淫虫に感染してしまった状態のことを言う。

「淫虫」とは、つい最近存在が確認されたばかりの新種の寄生虫のことである。

 その淫猥な名が示す通り、奴らが狙うのは女だけ。

 人間の女性、その子宮内に棲みついて、内部の柔肉に潜り込み栄養を摂取するのだ。

 そしてその際──蚊が血を吸う時に唾液を分泌して、それが痒みを引き起こすのとまったく同じ原理で──奴らも特殊な唾液を分泌し、宿主にある症状を誘発せしめるのだった。

 そう、それこそが、強力な“催淫効果”である。

 淫虫が「淫虫」と呼ばれるゆえんがこれだった。



 さて、淫虫症に感染したら、その女は一体どうなってしまうのだろう。

 そもそも淫虫とは、ギリギリ目に見えるかどうかという程度の大きさしかない。

 そんな淫虫が、膣から子宮内に侵入して感染が始まるのである。

 淫虫は子宮内に到達すると、すぐに肉をかき分けて子宮内壁へと姿を消す。

 そして奴らは、数時間のあいだは大人しくしている。

 が、数時間後。淫虫が腹をすかせると、食事が始まる。

 そう、子宮の壁に噛み付いて、栄養を吸い始めるのだ。

 もちろんその時には唾液も分泌され、宿主である女を強烈な催淫状態へといざなってしまう。

 これにより、女は強烈な劣情を催してしまうのである。

 淫虫による催淫効果は非常に強力で、まず彼女たちは全身のあらゆる部分が敏感になり、ちょっとした刺激でも声を漏らして感じるようになる。

 もちろん、精神的にもありえないほど興奮し、どうしても男が欲しくて欲しくてたまらないといった心理状態に陥りもする。

 男に抱いて欲しくなり、子宮に精子を注ぎ込んでもらいたくなるのだ。

 なぜか? もちろんそれには理由があって──。

 淫虫は時間の経過とともに自然にその数を増やしていくのだが、男性の精子を浴びればその繁殖速度を数百倍にまで高めるという特色を持っているのだった。

 ゆえにおそらく、淫虫は蚊のようにむやみに迷惑な症状を引き起こしている訳ではないらしいのだ。

 奴らは宿主である女が、自分たちの利益になる行動を取るように仕向けている──そう考えるのが自然だった。



 ガンと同じく、ごく初期に発見できれば手術をして数匹の淫虫を取り除くことで完治となるが……。

 ある程度繁殖した中期以降になれば、何百何千という淫虫が子宮内壁にびっしりと棲みついていることになるので、手術をしても淫虫だけを取り除くことは困難になる。

 特に一回でも精子を中出しされてしまえば、中では数百倍という速度で数が増えるのだから、手術して治すという道は諦めざるを得ない。

 もちろん子宮を全摘出すれば症状は治まるが、一生子供が産めない身体になってしまうリスクを考えると、そういう選択を女性に迫るのは酷な話だった。

 何といっても、性欲が高まり、身体の感度が上がってしまうという以外にはまったく害がないのだから。

 手遅れになってしまった患者には、多くの医師が、しばらくのあいだ淫虫とともに生きていくことを勧めた。どうせ子宮を摘出するにしても、子供を産んでからにしたほうがいいと。

 まぁ一番いいのは、繁殖して数が増える前に手術をし、一匹残らず子宮から取り除くことではあるが……。

 最初期から激しい自覚症状が現れるにもかかわらず、その強烈な催淫効果のせいで──そうすることができた女性は一握りしかいなかった。





 仁美は一度イッたというのに、まだ収まらない性的興奮、その突き上げるような衝動に悩まされていた。


「……うふぁ……ううあッ……」


(……何、これ……全然、収まらない……んはぁ……)


 ベッドの上で全身を汗まみれにし、なおも腰を振りながら喘ぐ。

 ──早く病院へ行かないと。

 感染して一日目なのだ。

 今ならまだ淫虫の数もそれほど増えてはいないハズで……。

 すぐに手術をしてもらえれば、きっとまた昨日までと同じような毎日が送れるようになる。

 出かける準備をしようと、仁美はベッドから下りて立ち上がった。

 フラつきながらも、何とか部屋を出て洗面所へと歩く。

 急がないと。時間を置けば、奴らは自然と繁殖してしまうのだから。

 特に、男性の精子を子宮内に注ぎ込まれてしまえば、もう終わりだ。爆発的に数が増えて、手術すらできない状態になってしまう。

 そんなことになれば、私は明日からもずっと、こんなにも淫らな身体と付き合っていかなくてはならない……。

 そんなことがあってはならない。絶対に。

 今日はもう仕事なんて無理だ。休ませてもらおう。会社に電話して、そしてすぐに病院へ向かおう。

 仁美は汁まみれになったパンツを脱ぎ捨てて、冷たい水で顔を洗った。





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[ 2011/11/29 02:58 ] 淫虫症の女 | TB(-) | CM(-)
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